59歳で収入3割減。公的年金は前倒しで受け取るべき? 貯金より価値ある資産
Websiteからお申し込みいただいたオンラインFP相談に、ファイナンシャルプランナーの中村芳子がお答えしました。
相談者: 男性(59)看護師 新潟県在住 父母と同居
相談内容:
体調を崩したことをきっかけに、正社員からパート勤務へ切り替えました。手取り収入は月25万円から月16万円へ、約3割減。実家暮らしで生活費は何とか賄えているものの、貯金できなくなりました。
老後資金が不安なので、65歳からの公的年金(月17万円)を60歳から前倒しで受け取り(月13万円)、そのお金をNISAで運用して増やせないかと考えています。65歳の時点で「年金の運用益+今の貯金500万円」で1,500万円ほど用意できれば、老後は安心なのではないかと思うのですが——。
年金の「前倒し受給」はおすすめできません
まず結論からお伝えすると、NISA投資の元手を作るために公的年金を繰り上げて受け取るのは危険です。
理由は2つ。
ひとつは、NISAの運用成果は保証されていないこと。ここ数年は世界的な株高が続いていますが、過去には5年間積み立てても利益がほとんど出なかった時期も、元本割れした時期もあります。月13万円を5年間(60ヶ月)積み立てると元本は780万円。1,000万円に増える可能性がある一方、780万円のまま増えない、あるいは600万円以下に目減りするリスクも。
もうひとつは、年金を5年間前倒しで受け取ると、受給額そのものが約24%減ってしまうこと(月17万円→月13万円)。男性の平均寿命81歳まで生きた場合の受取総額はほぼ変わりませんが、長く生きるほど、損をする仕組みになっています。相談者のご両親は87歳、90歳とご健在とのこと。
「うーん、81歳で死ぬのは想像できないなあ」
貯金は減らさず、その一部をNISAに置き換える
「毎月の収入から貯金できないから、投資もできない」と思いがちですが、そんなことはありません。今ある貯金500万円の中から、毎月一定額を投資信託の積立に回せばよいのです。
NISAは長期運用が基本ですが、いつでも引き出せる制度です。5年未満で引き出すと元本割れのリスクはやや高まりますが、資金が固定されるわけではありません。たとえば月5万円(年60万円)ずつ積み立てれば、4年でおよそ240万円、貯金の約半分がNISA口座に置き換わる計算になります。「減らない貯金」と「増える可能性のある投資」のバランスとして、無理のない配分といえるでしょう。
投資先はつみたて投資枠で、国内株式・海外株式を組み合わせた投資信託を2〜3本ほど。取引のある地方銀行の窓口でも口座開設は可能です。初めての方は、オンラインより窓口で説明を聞きながら手続きするほうが安心です。
実は、本人が気づいていない「すごい資産」がある
ここまではお金の話でしたが、実はこの相談者には、貯金やNISA以上に価値のあるすばらしい資産があります。それは「看護師」という資格と、それを活かして働き続けられる健康です。
看護師は、65歳を過ぎても現役で働く方が多い職業。勤務日数を調整しながら77歳まで働いた方もいます。稼ぐ力は、どんな資産運用にも勝ります。投資のように損をすることもなければ、インフレで目減りすることも、詐欺で奪われることもありません。
体調不良の原因を尋ねると、内臓に異常は見つからなかったものの、足のむくみや動悸があり、フルタイム勤務が難しくなったとのこと。そこで生活習慣を聞くと、車移動が中心で、ここ数年ほとんど歩いていないことがわかりました。運動不足は自律神経の働きを弱め、体調不良につながることもあります。
60歳から歩き始めて、70代でマラソン完走した例も
健康を取り戻す方法として特別なことは必要ありません。まずは歩くことから。私の父は60歳で退職し、糖尿病を抱えていましたが、毎日2〜3時間歩くうちに自然と走り始め、1年後にはマラソン大会に出場。その後ニューヨークやホノルルなど、世界各地のマラソン大会を完走。70代で細マッチョになり、周りを驚かせました。。
走る必要はなく、まずは歩くこと。そこから自分に合った楽しめる運動を生活に組み込んでいくのがおすすめです。相談者は、実はかつてバイアスロン経験もあったそうで、「泳げるようになってトライアスロンに挑戦したい」と、この日からウォーキングを始め、スイミングスクールを探し始めました。
看護師というスキルに健康が加われば鬼に金棒、どんな資産運用もかなわない強みになります。元気になれば、パートから正社員に戻ることも、65歳を超えて70歳、75歳まで働き続けることも視野に入ってきます。
まとめ
- NISAの元手を作るための年金繰上げ受給はしない
- 今の貯金の一部を、無理のない範囲でNISA積立に振り替える
- 資格と健康は、どんな資産運用よりも強い「資産」
- まずは毎日歩くことから、生活に運動を取り入れる
以上、ご検討ください。ご相談、お待ちしています。
※このコラムの内容はnoteに詳しく掲載しています。
老後についての漠然とした不安、一人で抱え込まずにお話しください。数字だけでなく、あなたが本当に大事にしたいものから一緒に整理していきます。
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中村芳子 ファイナンシャルプランナー アルファ アンド アソシエイツ





