住宅販売現場のFPに要注意!貯金30万円の夫婦に「4500万円の戸建て、問題なく買えます」
結婚5年目、千葉県にお住まいの会社員の夫(34歳・年収600万円)と、奥さん(37歳)です。
妻は保育士として働いていましたが、数年前に病気で退職。最近回復され、再就職先を探している最中でした。
おふたりは「そろそろ家がほしいね」と、漠然と3,000万円台の中古マンションをイメージしていました。
そんなある日、たまたま通りかかった新築一戸建ての販売現場。 ふらっと立ち寄ったところで、営業担当者から声をかけられました。
「当社のファイナンシャルプランナー(FP)に無料相談してみませんか? 将来の試算もできますよ」
お金のプロに無料で診てもらえるならと、軽い気持ちで相談を受けました。 現在の貯金は約30万円。妻は求職中で収入はゼロ。 そんな状況を伝えたにもかかわらず、そのFPから返ってきた言葉は
「ご主人ひとりの年収で4500万円のローン審査は通ります。頭金なしのフルローンで問題なく買えます。皆さんそうしています。奥様が再就職なさったら、繰上げ返済もできますよ」
当初の予算より1,000万円以上も高い4,500万円の新築戸建て。 プロに「買えます」と背中を押され、夢が膨らむ一方で、ご夫婦の頭の隅には「本当に……?」というぬぐえない不安が。そこでセカンドオピニオンとして、弊社の相談室(Fee-Only)のドアを叩かれたのです。
なぜ、貯蓄30万円で「大丈夫」と言えてしまうのか?
結論から言います。この資金計画は極めて危険です。
貯金30万円という状態は、引越し費用や新居の家具・家電代どころか、急な病気やトラブルに対応する「緊急予備資金」すらほぼゼロということです。さらに購入時の諸費用(手付金やローン手数料など)すらローンに組み込むことになり、買った瞬間に「オーバーローン(住宅の価値以上の借金)」を抱えることになります。
では、なぜ住宅販売現場のFPは「大丈夫」と言ってしまうのでしょうか?
ここに、「無料FP相談」の構造的なからくりがあります。
住宅販売現場にいるFPは、住宅メーカーや仲介会社と提携しているか、その販売代理店から報酬を得ています。保険会社や住宅ローン会社の販売員もいます。
彼らの目的は「家を売る契約を成立させること」です。
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販売現場のFPのゴール: ローン審査を通過させ、家を買ってもらうこと
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独立系(Fee-Only)FPのゴール: 家を買った後も、お客様が破綻せずに幸せに暮らし続けられること
販売現場の試算では、「金利はずっと上がらない」「奥様はすぐに再就職できて収入が途切れない」「老後資金の支出は最小限で見積もる」といった、都合の良い前提条件が重ねられがちです。
「借りられる額」と「無理なく返せる額」は違います。
年収600万円なら、4,500万円のローンを「借りる(審査を通す)」ことは可能かもしれません。通した千葉銀も千葉銀です。
しかし、固定資産税やメンテナンス費用、将来の生活費を考えれば、貯蓄30万円の状態で踏み切るのはリスクが高すぎます。
「買わせるためのプラン」ではなく「守るためのプラン」を
緊急費の貯金がないこと、住宅ローン以外のコストが計上されていないこと、予定外に売ることになったらオーバーローンで対応できないこと、などを丁寧に説明しました。
ご夫婦は「私たちが感じた不安は、見当違いじゃなかったんですね。契約はやめます。今日にも電話して断ります」と決断してくれました。
住宅ローンを検討する際、私はお客様に以下の明確な基準をお伝えしています。
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理想の購入プラン
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自己資金:25%(頭金 20% + 諸費用 5%)
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住宅ローン:物件価格の 80%以内 且つ 年収の 4倍まで
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少し譲歩したプラン
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自己資金:15%(頭金 10% + 諸費用 5%)
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住宅ローン:物件価格の 90%以内 且つ 年収の 5倍まで
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年収600万円のご主人の場合、理想的なローン額は2,400万円(4倍)、譲歩しても3,000万円(5倍)までです。 4,500万円というローンは、実に年収の7.5倍。これは夫婦共働きでガンガン稼ぎ続けることを前提とした、逃げ場のない超高リスクな設定です。
「奥さんが働けば大丈夫」に潜む本当の罠
販売現場のFPは「奥様が再就職すれば返せますよ」と軽々しく言いました。 しかし、ここに最大の落とし穴があります。
奥様は体調を崩して前職を退職、ようやく回復して「さあ、これから」という大切な時期です。 もし、妻の将来の収入をあてにして限界ギリギリのローンを組んでしまったらどうなるでしょうか?
「住宅ローンを返すために、無理をしてでも働かなきゃいけない」
「合わない職場でも、ローンがあるから絶対に辞められない」
そんなプレッシャーから好きでもない仕事にしがみつき、ストレスを抱え込んでまた体調を崩してしまっては、元も子もありません。
妻の収入を住宅ローンの計算に入れるのは、「新しい仕事が決まり、そこで長く、楽しく働けそうだという実感が持ててから」にしましょう。
ご主人は、奥さんが、楽しく長く働ける仕事を見つけることを応援してください。
まずは「緊急資金150万円」それから「自己資金450万円」
そしてもうひとつ、絶対に譲れないのが「緊急資金」です。
貯金30万円で全額ローンを組むということは、購入した瞬間に手元資金がゼロになることを意味します。 人生には、急な病気やケガ、事故、失業など、予想外の出費がつきもの。
マイホームを購入する以前に、まずは生活費の約3ヶ月分+αとして「手元に150万円」の貯金が残る状態を作ることが先決です。
そして、仮に3500万円の中古住宅を目標にするなら、頭金350万円(10%)+諸費用280万円(8%)=630万円の自己資金が必要。
合計で680万円の貯金をつくることが、夫婦の目標になります。
妻の就職までは、年50万円+、就職後は年150万円+貯められるので、4、5年後には家を買う十分な貯金ができます。
相談の最後、これらの具体的な数字とリスクをお話ししたところ、ご夫婦は深く納得され、ホッとした表情を浮かべられました。
「販売現場のFPさんに『買える』と言われて舞い上がっていたけれど、危うく人生を壊すところでした。まずは妻のペースで仕事を探し、600万円以上貯めてから3000万円台の家を探します。家より何より、妻の健康が第一ですから」
相談者が見せてくれたライフプランシートは、30ページにものぼり、いったいどの数字をどう読めばいいかわかりませんでした。
アクサ生命保険会社のソフトウェア。なるほど、このライフプランシートの目的は、購入と同時に積み立て型の保険に加入すると、28年後にその満期金(あるいは解約返戻金)で、住宅ローンの一部を繰上げ返済できますよ、という提案をするため。保険販売のためのツールでした。
このようなセールスマンが、FPを名乗ることに空恐ろしさを覚えます。
本当のFPの仕事は、家を買わせることではなく、相談者にベストのタイミングで、予算に見合った最善の物件を、健全な資金プランで買うお手伝いをすることです。
「住宅ローンを払うために働くだけの人生」にならないように。
マイホームという大きな買い物をするときは、商品(不動産、住宅ローン、保険)を売る立場にない、完全に独立した立場(Fee-Only)のFPにご相談ください。
相談のご予約はこちらから。お待ちしています
中村芳子 ファイナンシャルプランナー アルファ アンド アソシエイツ






