お金の基礎知識

2026年01月13日

「FIREには1億2000万円必要」とAIに言われた30歳男性からの相談

Websiteからお申し込みいただいたオフィスでのFP相談に、ファイナンシャルプランナーの中村芳子がお答えしました。

相談者: 男性(30)会社員

相談内容:

今の仕事、収入は悪くないけどとにかくハード。できれば50歳くらいで辞めたい。でもいくら貯めればリタイアできるのか、全然わからない。先週AIに聞いてみたら「1億2000万円」という数字が返ってきて、逆に不安になって相談に来た——という30歳男性。

 


その1億2000万円、どこから出てきた数字?

聞いてみると、根拠は「年4%で運用して、年480万円の利息だけで夫婦二人が暮らせる」という計算らしい。インデックスファンドで年4%なら十分現実的な数字だし、ロジック自体はおかしくない。

でも本人はまだNISAすら始めていない。「始めたいと思いつつ忙しくて…」という状態。よく聞く話だ。

まず伝えたいのは、1億円は普通の共働き夫婦でも作れるということ。ただし、貯まるのは60歳か65歳。50歳での完全リタイアを目指すなら、話は別のアプローチが必要になる。

お金の前に、聞きたいことがある

マネープランを組む前に、必ずやってもらうワークシートがある。「早期退職して何がしたいのか」を書き出してもらうものだ。

彼が挙げた理由は3つ。

  • 家族とゆっくり過ごす時間が欲しい
  • 興味のある研究にとりかかりたい
  • 旅行がしたい

これを見て、私は言った。「それ、リタイアしなくても実現できますよ

「いや、今は忙しくてそんな余裕ないんです」

そう、これは貯金の問題じゃない。仕事のやり方と、優先順位と、タイムマネジメントの問題だ

「今」しかできないことを、後回しにしない

早期退職のために貯金しようとして、残業や休日出勤が増えて、結果、家族と過ごす時間がどんどん減っている——これ、本末転倒だ。

15年後にお金が貯まってリタイアした頃には、子どもはもう独立している。小学生・中学生の我が子と過ごせる時間は「今」しかない。10年後に取っておくことはできない。

研究だって同じ。今から週2時間確保するだけで、15年後には1,500時間以上が積み上がる。始めるのを先延ばしにしたら、熱意も消えるし、他の誰かが先に結果を出してしまうかもしれない。

旅行も同様。子どもが小さいと大変なこともあるけど、子どもと一緒だからこその楽しさもある。私自身、我が子が生後2ヶ月のときに家族3人でアメリカに行った。国内旅行は毎年、海外旅行は2年に1回。年を取ってからの海外旅行は、若い頃ほど楽しめない。私も昔はウィンドサーフィンやスキューバダイビングを楽しんでいたけど、今はもうそこまでやりたいと思わなくなった。感動も、知的好奇心も、活動範囲も、歳を重ねるごとに少しずつ縮んでいく。

やりたいことは、リタイアまで我慢するものじゃない。今年からやるものだ。

退職年齢まで生きている保証は、誰にもない

さらに言うと、退職まで自分も家族も生きているという保証はどこにもない。仕事柄いろんな人生を見てきたけど、退職直前や直後に亡くなって、「やりたかったこと」を何一つやらずに去っていった人たちを何人も見てきた。

先月、私の若い友人が30歳で急死した。相談者と同じ歳だ。

だから私のコンサルティングのモットーはこれ。

「来年死んでも、120歳まで生きても、後悔や不安のない人生を送るマネープラン」

FIRE(早期リタイア)を目指すより先に、まずこれからの10年をどう充実させるかにフォーカスしてほしい。30代のうちに手取り収入の15%を貯蓄と投資に回していけば、無理なく家を買い、子どもを育て、老後にも備えられる。共働きなら、65歳を待たずに50代での早期退職も十分視野に入る。

そもそも、好きな仕事なら辞めたいと思わない

ここで、あえて逆説的なことを言いたい。

本当に好きな仕事、楽しい仕事をしていたら、そもそも「辞めたい」なんて思わないはずなんです。

医者、弁護士、牧師、アーティスト、シェフ——80代でも現役で働いている友人が私には何人もいる。みんな、命の続く限り働きたいと思っている。行きつけのとんかつ屋を営むご夫婦も、まさにそう。農業や漁業をやっている人たちだって、体が続く限り働きたいと願っている。働くことは、本来楽しいことなんです。

「今の仕事が楽しくない」のは、仕事そのもののせいじゃなく、働き方のせいかもしれない。労働時間が長すぎる。通勤が長すぎる。休みが取れない。ストレスが大きすぎる。ストレスがゼロの仕事なんてないけど、やりがいがあれば、それを乗り越えられる。

会社員だから我慢するしかない、と諦める前に、今の環境を自分で整えられないか考えてみてほしい。それでもダメなら、転職という選択肢もある。そのとき大事なのは、収入の額だけじゃない。やりがいを感じられるか、自分と家族の生活を楽しめる環境か。収入が1〜2割減っても、楽しく長く続けられるなら、そのほうが結果的に幸福度は上がる。

まとめ

  • AIが出す「必要な老後資金」の数字は、前提条件込みで鵜呑みにしない
  • リタイアしなくても「今」やりたいことの多くは実現できる
  • 30代のうちから収入の15%を貯蓄・投資に回せば、共働きなら1億円は現実的な目標
  • 好きじゃない仕事だから辞めたいなら、働き方や環境を変える選択肢もある
  • FIRE(早期リタイア)よりFINER(楽しく、生涯現役)

 

相談のもっと詳しい内容はnote に掲載しています。ご覧ください。

 


「いくら貯めればいいのか分からない」「このままでいいのか不安」——そんな漠然としたモヤモヤこそ、一人で抱え込まずに話してみてください。数字だけでなく、あなたが本当に大事にしたいものから一緒に整理していきます。

ご相談の予約はこちらから。お待ちしています。

中村芳子 ファイナンシャルプランナー

 

 

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