50代が落ちやすい、おそろしいお金の落とし穴
先日、50代半ばの男性から、こんなメールが届いた
〜中村さんの『50代』の本を読みました。家族の中で大変なことが判明しました。1日も早く相談したいです〜
これはほっておけないと、なんとかスケジュールを調整し、Skypeでのコンサルティングを承った。
男性は、本を読んで「うむ、やはり夫婦で話し合って、一緒に考えることが大切なんだ」と気づき、奥さんと話す場を持った。それぞれ平均以上の収入がある共働きカップルで、家賃は彼、食費は彼女という具合に出費を別々に負担、貯金もそれぞれで貯めていて、相手のお金のことを尋ねることはなかった。相手はきちんと貯めているようだし、不安はなかった。
ところが、彼が貯金のことを尋ねると、彼女は「実は最近、クリック365というのを勧められて…」1ヶ月ほど前に500万円を送金、その後、担当者から「損が出てしまったが、その分のお金を入れて続ければ、必ず儲かる」と言われて、さらに500万円を入金したところだった。
先物取引業者から、彼女の職場へ勧誘の電話が何度かかかってきて、投資の仕組みはよくわからなかったが「会ってみると、とても良さそうな人だったから」信頼できそう、必ず儲かるって言ってるし、と送金してしまったらしい。
その後、夫の指示ですぐに取引を中止。弁護士にも相談したが、お金は戻って来ないだろうとのこと。気が付かなかったら1000万円の損ではすまず、貯金全部を持って行かれるところだった。
50代が狙われる理由は退職後への不安
仕事柄、金融詐欺の被害にあった人の相談を受けることも少なくない。過去の例を思い出していて、いま気がついたのは、全員が50代ということだ。
全員、金持ちではないけれど、真面目に働いて1000万円〜3000万円程度の貯金をつくっていた。銀行預金と貯蓄タイプの保険だけで貯めてきたので、投資経験はない。間もなく退職を迎えるにあたって、老後がなんとなく不安になってきた。そんな時に「手持ちのお金を大きく増やせますよ」と勧誘されると、つい話を聞いてしまう。相手はプロだから、投資経験がない人を騙すのは、赤子の手をひねるより簡単。
まず300万円。プラス500万円。さらに1000万円、2000万円と入金させられ、気がついたら残高がゼロになったり、借金を抱えたり、業者が消えてしまったりする。
夫婦で30年かけて貯めたお金を失ってしまったことが原因で、離婚してしまったカップルもいる。
幸い、今回の相談者カップル、真面目な彼は「1日寝込んで、立ち直るのに1週間以上かかった」が、楽観的な彼女は「これから気をつけなきゃ。簡単に人を信用しちゃだめね」ということで、夫婦関係にはひびは入らなかった。
投資経験がないと、投資のリスクがわからず騙されてしまう
真面目で高学歴の人が騙されてしまう最大の原因は、投資経験がないことだ。お金を預けたことがある金融商品は、銀行預金、郵便貯金、貯蓄型の保険(養老保険、学資保険、年金保険)などだけ、という人たちだ。
そうすると、投資にはリスクがつきもの、わからない投資に手を出してはいけない、一度にまとまったお金を入れてはいけない、など、投資の基本の基本がわかっていないので、「絶対に儲かりますよ」「リスクはありません」「選ばれた人たちだけに紹介しています」などという、ありえない嘘に、ころりと騙されてしまう。
次の3つのことを心得てほしい
1、投資にはリスクがつきもの。
年10%値上がりする可能性があるものは、年10%以上値下がりするリスクがある。3ヶ月で2倍になる(100%値上がりする)可能性があるものは、3ヶ月で0になる(100%値下がりする)可能性がある。商品先物取引や為替証拠金取引(FX)のように、入金額の数倍〜数十倍の借金をして投資にあてる仕組みのものは、100万円の投資が1000万円になる可能性がある一方で、900万円の借金をかかえるリスクがある。
ところが、リスクは頭で考えるだけではわからない。実際に損をして、痛い目にあって初めて、損をするということが理解できる。若いうちから投資をして、損をして、投資を痛みを経験するのが大切なのはそのためだ。
そして、損をするから投資をしない、ではなく、損が小さくなるようにコントロールしながら、自分はどのくらいのリスクがとれるかを知って、投資を続けていくことが大切だ。
2、わからない投資には手を出さない。でも投資信託は理解すべし。
説明を受けてわからないまま「理解しました」という書類に、絶対サインをしてはいけない。理解できない投資には、絶対に手を出してはいけない。
ただし、投資の基本商品である「投資信託」は話が別。これは、時間をかけて、少しずつやってみて、必ず理解して、使いこなせるようになってほしい
3、パートナーや家族に相談する
投資経験のない人が投資を始める時は、ひとりで判断しないで、パートナーや家族に相談してみよう。
4、最善の策は?
家族もよくわからない、というときは、消費生活センターなどの公共サービスやファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみよう。
金融の世界はどんどん進歩し、変化している。わからないことがあって当たり前。恥ずかしがる必要は全くない。わからないことがあったら、わかるまで聞く。
投資のことも、健康のことも、人間関係も、わからないことをほっておくと、手遅れになることが少なくない。勇気を出して尋ねよう。
投資だけではなく、資産全体、人生全体をみて投資をアドバイスしてくれるファイナンシャルプランナーが理想だ。
はい、私が理想のファイナンシャルプランナーの一人です。お問い合わせお待ちしています(笑)
中村芳子 ファイナンシャルプランナー