老後の不安からマンション購入 個人年金 資格商法で失敗する人たち
日本の女性ファイナンシャルプランナー(FP)第1号として、お金の悩みが時代によって移り変わるのを、ずっと見てきた。最近の傾向として、お客さんの共通の悩みは「老後の不安」だ。原因は2つ。「人生100年」と「老後に2000万円」。
急に不安にさせられた人たち
日本でリンダ・グラットン著の『ライフシフト』(東洋経済新報社)という本が発行されたのは2016年、友人に勧められてすぐに読んだ。英語の原書『The Shift』は2011年の出版だ。当時、私はアメリカに住んでおり、年に数回、仕事のために日本に来るというスタイルをとっていた。
実際にインターネットやEメール、スカイプなどを使って、タイムゾーンの違う人たちと時差を調整しながら仕事をしていたので、「こんな働き方は、数年前までできなかった」「働き方が根本的に変わってきている、すでに変わっている」と実感していた。今までのある種の経験は使い物にならなくなり、新しい知識やスキルを身に付け続けないと、世の中の変化についていけなくなるのは明らかだった。
実は、人生100年という概念も目新しくはなかった。FPとして以前から「明日死んでも、120歳まで生きても満足できるマネーマネジメントを考えて実行しよう」と推奨してきていた。急に社会が変わったわけではないのに、「人生100年」「老後に2000万円」といった言葉やコンセプトが注目され、人々がショックを受けてオロオロするのがよくわかった。おかげで今、不安になった人たちが世の中にあふれている。あなたもそのひとりですか?
不安から逃れようとすると間違った判断をし、もっと悪くなる
長年FPとしてお金のコンサルティングをしてきたので、不安になった人たちが不安から逃れようとして、間違った選択、間違った行動をし、以前より悪い状況になる事例をたくさん見てきた。たとえば、こんな具合だ。
(1)30代独身がマンションを買う
「結婚しないかもしれない」という不安を持ち始めた独身女性が30代でマンションを買う。年収もまだ低く、貯金も少ない。物件を見る目もない。営業マンの言うことをそのまま信じてしまう。その結果、狭くて立地も良くない割高の新築マンションを、無理な資金計画で買ってしまう。たとえば、1500万円の価値しかない狭いマンションを2000万円で買わされる。
すると、こんな不都合が待っている。
・購入後に住宅ローンの返済で、貯金ができなくなる。
・古くなるにつれ、不便さや狭さが気になり、住み心地に満足できなくなる。
・売ろうとしても、買った値段よりはるかに低い値段でしか売れない。
・住宅ローン返済が70歳まで続く。
・狭いので、恋人を呼んだり、家族や友人を泊めることもできない。
・退職する頃には古くなって、住み続けるのが難しくなる。売りにくい。
老後の不安を解消したかったのに、老後へのマイナス要素を増やす結果になってしまうのだ。
不安を元に行動すると、同じように悪い結果を招いてしまいがちだ。いくらでも例をあげられる。
(2)20代、30代で年金保険に入ってしまい、保険料が高額なので貯金ができない
(3)資格取得やスキルアップのために高額なセミナーをローンで受講し、返済で生活が苦しい
(4)老後のために資金を増やそうとハイリスクの投資(FXや先物取引など)で大損してしまう
(5)老後の不安から投資詐欺にひっかかり、有り金を奪われてしまう
ブームの不動産投資でカモにされる人たち
ここに最近加わっているのが、サラリーマン向けの不動産投資。あなたは大丈夫だろうか?私のところにも「不動産投資を始めたい」「勧誘されてこんな投資をしてしまったが、大丈夫だろうか」という相談が増えている。そして大丈夫でないケースが多い。次回、お話ししよう。