貧乏は財産だ 金持ちでない親に感謝しよう!
「貧乏は財産だ 金持ちでない親に感謝しよう」というのは、私の著書『20代のいま、やっておくべきお金のこと』のプロローグの一項目だ。
この本は、読み返すたびに「うーん、本質をついている!いいこと書いてあるなー」と自画自賛してしまうページがいくつもある。この貧乏についての項目も、うーん真理だなーっと。
このことを実感する素敵な話を聞いたので、おすそわけしたい。
その女の子は、耳の聞こえない両親の家に生まれた。両親は聾唖の高校までしか出ておらず、大学卒の学歴がないので、彼女がものごころついたこ頃から、いつも外で働いていた。やがて弟が生まれる。幸運なことに子どもはふたりとも耳が聞こえた。ふたりは両親から手話を学び、テレビや近所の人たちから話し言葉を学んだ。両親はいつも働いていたので、テレビは二人の友達で先生だった。彼女は特にドキュメンタリー番組を愛した。見たことのない世界、会ったことのない人たちを彼女に紹介してくれた。
高校生で、彼女は学校に行くのをやめた。不登校。韓国の(そう、これは韓国の話です)学校教育は、日本以上の受験文化、詰め込み教育だという。彼女は読みたい本ややりたいことがあったのに、高校に行って言われた通りに勉強をしていたら、自分のやりたいことをやる時間がない、と気付いたのだ。
そして、彼女は旅行に出ようと思いたつ。カンボジアやベトナム、タイやマレーシア。小さいときに、学校以外、近所の人やテレビからいろんなことを学んだように、異国で旅先で、出会う人々から、旅そのものから、多くのことが学べるはずと確信したのだ。
でも、お金はなかった。両親はふたりとも朝から晩まで働いていたが、家族4人が生活するだけでせいいっぱいだった。16歳の彼女は、自分の旅の計画をつくり、分厚いフォルダーにして、資金を出してくれそうなところを回った。高校の先生がメンターになってくれた。何箇所もまわって、お金が集まった。最初、ひとり旅に反対した両親も、計画ができ資金が集まったときには、何も言わず送り出してくれた。彼女は8週間の旅に出た。
そして、自分の旅の経験をもとに、ドキュメンタリー映画を撮りたいと思った。学校の外で、旅が、道が、子どもたちにいろいろなことを教えてくれる。そのことを世の中の人に伝えたいと思った。
彼女は最低限の機材を揃えて、映画を撮り始めた。17歳。「Road Scholar」という彼女の最初の作品は、こうやって生まれた。小さな映画祭で上映され、たくさんの人たちが共感してくれたとき、とてもうれしかった。
18歳でブロードキャスティング(報道)を学ぶために、大学に入学。映画も撮り続ける。やっぱりお金はないから、アルバイトで生活費や学費を稼ぎながら、映画のための資金集めをする。クラウドファンディングも利用した。
そうやって撮った2作目のドキュメンタリーは、耳の聞こえない両親と自分と弟、4人家族の生い立ちと日常を撮った。「きらめく拍手の音」2014年。耳の聞こえない人の文化と、聞こえる人の文化、私は2つの文化を知っている、と彼女は語る。この映画は2016年の山形国際映画祭で賞を受け、2017年6月からポレポレ東中野などで公開される(4月16日、世田谷区の下高井戸シネマのドキュメンタリー映画祭で1回上映)
「お金がなくても、やりたいことを実現できる」と彼女はいう。Lee Bora さん
「ファンドを集めるのはとても大変で、責任が大きくて、とても大変だけど」と笑う。
お金がなかったからこそ、彼女は学校の外でたくさんのことを学び、お金を集めるためにたくさんのことを学び、責任を果たすためにたくさんのことを学び、そして今も学び続けているんだなーって。その経験の中から、自分がやりたいことを見つけて、それを実現するために(決してお金がないことや何かが足りないことを理由にすることなく)一歩一歩進んでるんだなあって。
彼女はとてもチャーミングで、日本語がわからないのに、数ヶ月前に日本に来て、シェアオフィスを借り、そこで3本目の映画の編集をしている。すごい度胸。まわりの人たちとのやりとりはだいたい英語。「すごい」とか「おつかれさま」とかは日本語。
「貧乏は財産だ 金持ちでない親に感謝しよう」あなたにも、私自身にも、もう一度伝えたい大切なメッセージ。